多くの人々は、家に求める条件の一つとして「日当たり」を挙げることでしょう。
もし家を購入した後に、南側の家が建て替えの作業が始まってしまった場合、誰でも日当たりに影響が及ぶか心配になることでしょう。
古い家を購入した場合でも、建て替えの際には制限があるのではないかと不安に感じる人もいるかもしれません。
ここで登場するのが、日当たりに関連する規制の一つである「北側斜線制度」です。
日当たりを確保するためには、さまざまな規制が存在します。
今回は、「北側斜線制度」を中心に、その基本的なアイデアを実際の計算例を交えながら詳しく解説します。
北側斜線制限
北側斜線制度は、隣地にある住宅の日当たりに配慮した規制です。
この規制は、第一種および第二種低層住居専用地域および第一種および第二種中高層住居専用地域で適用されます。
具体的な規制内容は、敷地の境界線から垂直に5mまたは10m上がったところから一定の勾配を持たせ、隣地の建物に太陽の光が当たるようにするというものです。
この規制によって、傾斜のある建物を目にしたことがある人もいるかもしれません。
しかし、その傾斜はデザインの一環ではなく、隣地に太陽の光を当てるためのものです。
また、北側斜線の規制に配慮しながら、容積率(地域ごとに定められた建物が占められる割合)を最大限に活用するために、中高層住居専用地域にあるマンションの北側は階段状のルーフバルコニーになっていることもあります。
緩和などもあり複雑
基本的な規制は、図に示されているとおりです。
しかし、北側斜線規制にはいくつかの要件があります。
具体的には、緩和条件や真北の求め方などが挙げられます。
この規制は複雑で、正確な位置を示すことは容易ではありません。
緩和条件の一例としては、隣の敷地と道路が隣り合っている場合、道路の反対側から北側斜線の位置を計算する必要があります。
また、北側にある隣の敷地の高さが自分の敷地の高さよりも1m以上高い場合は、高低差を調整する必要があります。
具体的には、(高低差-1m)×0.5という計算式を用いて、北側斜線の位置を求めます。
例えば、隣地が2m高い場合、(2-1)×0.5=0.5mの位置から北側斜線の位置を計算します。
また、河川や水路がある場合は、その河川や水路の中心線から位置を計算する必要があります。
さらに、第一種および第二種低層住居専用地域では、日影規制が適用されるため、北側斜線規制は適用されません。
また、高度地区が指定されている地域では、より厳しい斜線内で建物を建てる必要があります。
例えば、東京都世田谷区の第一種高度地区では、北側斜線よりもさらに厳しい、勾配0.6/1が定められています。
高度地区では、他の厳しい規制も存在することがありますので、必ず調査するようにしましょう。
建物を建てる際には、専門家に詳しく調査してもらう必要があります。
ただし、将来的に建て替えを考えている場合や隣地が建て替えられた場合には、不安に感じることもあるでしょう。
そんな場合には、もう少し簡単にまとめてみましょう。
北側斜線制限に対しての方法
高さが6.5mの建物について、第一種低層住居専用地域の北側斜線を考えてみましょう。
この計算では、高度地区や日影規制は考慮しません。
まず、敷地の境界線から1メートルの位置に建物を配置してみます。
計算すると、1メートル × 1.25 + 5メートル = 6.25メートルとなり、6.5メートルよりも低い結果となります。
つまり、軒先までの高さの方が大きいため、北側斜線にかかってしまいます。
次に、境界線から1.3メートルのラインまで建物の配置を控えてみましょう。
計算すると、1.3メートル × 1.25 + 5メートル = 6.625メートルとなり、6.5メートルよりも高い結果となります。
これにより、軒先の高さが北側斜線にかからなくなります。
しかし、建物の配置を敷地の奥に控えると、反対側の敷地との境界にも関わってきます。
そのため、建物の配置を敷地の境界線から控えて、隣地への日照への配慮をするのか、あるいはギリギリのラインまで配置して、上階の一部を斜めに切り込むのかを計算し、最も有効に建築できるように選択する必要があります。
したがって、狭小地では後者の選択肢が適しており、上階部分が同じ形をした家が並ぶことがあります。
道路斜線制限や他の制限との関係
道路斜線制限は、道路に日光を確保するために、建物の高さを制限する規則です。
特定の地域では、北側斜線と道路斜線の両方が厳しく定められており、より厳しい規制を適用する必要があります。
また、道路幅には適用距離という規定もあります。
例えば、第一種低層住居専用地域で容積率200%の場合、適用距離は20mで、勾配は1.25/1となります。
隣地斜線規制も別の制限であり、主にマンションやオフィスビルの建設に影響を及ぼします。
この規制は、20mまたは31mを超える建物の高さを制限します。
住宅地では、基準の高さ20mに勾配1.25で制限されます。
ただし、第一種および第二種低層住居専用地域では、もともと建物の高さが10mまたは12mに制限されているため、隣地斜線規制は適用されません。
他の地域では、隣地に急に高層マンションが建つことを心配する場合は、隣地斜線規制が指定されているかどうかを調べることをお勧めします。
まとめ
建物の高さに関しては、北側斜線規制という規定に基づき厳格に制限がされています。
この制約は、建物が周囲の景観や隣接する建物への配慮をするために存在しています。
具体的には、建物がその反対側の道路から見上げた際に空と建物の見える割合から決定される「天空率」という基準に基づき、高さが制限されます。
しかし、斜線規制の適応がある地域でも、一部の建物では天空率による緩和が行われており、厳格な制限が緩和されて建築されている場合もあります。
この場合、専門家が専用のソフトウェアを使用して天空率を計算し、建物の設計に反映させていることが一般的です。
したがって、一般の人が自分で天空率を計算することは困難です。
建物の周辺を調べる際には、現地で建て替えをした建物を探すと良いでしょう。
上階部分が斜面状になっていたり、マンションのルーフバルコニーが階段状になっている場合、その付近では北側斜線規制などの高さ制限がある可能性が高いです。
不動産取引を行う際にも、斜線規制に関する説明は重要な事項です。
営業担当者でも理解が難しい場合がありますので、購入時には斜線規制の適用がある地域での物件について、十分な説明を受けることが重要です。