マンションの老朽化は、築年数が進むにつれて必ず進行していく現象です。
これにより、マンション所有者は補修や建て替え、あるいは売却などの選択を迫られることがあります。
この問題は最近メディアでよく取り上げられ、その深刻さが認識されるようになってきました。
老朽化に対処できるマンションももちろんありますが、未だに十分な対策が取られているとは言えません。
老朽化は避けられないものですが、適切な対処や予防策を考えることで、悲劇を避けることができます。
自分のマンションでも起こりうる問題なので、老朽化に対する理解を深め、適切な対策を用意しておくことが重要です。
この記事では、老朽化によって引き起こされる様々な問題や進行したマンションの選択肢、そして老朽化に備えるための対策について詳しく説明します。
マンションの大規模修繕工事
「マンションの大規模修繕」とは、建物の外壁や屋上、廊下、バルコニーなどの共有部分を修繕する長期的な計画に基づいた工事のことです。
この工事は、建物の劣化を防ぎ、住民が安全で快適な環境で暮らせるよう整備するだけでなく、建物の資産価値を保持する役割も果たします。
賃貸マンションでは、修繕工事を指揮するのは物件のオーナーとなります。
一方、分譲マンションでは、各戸の所有者である区分所有者からなる管理組合が主導し、修繕工事の計画や費用管理を行います。
管理組合の中で、理事会や修繕委員会のメンバーが中心的な役割を果たしますが、住民の協力なしでは工事を進めることはできません。
管理会社や専門のコンサルタント、施工会社と協力し、円滑に修繕工事を進めるために、マンション内の体制をしっかり整備することが重要です。
マンションの大規模修繕で起こりやすい問題と対策
マンションの大規模修繕工事は、多くの住民が関わるため、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
これは、大規模修繕工事には多額の費用がかかるため、様々な利害関係が絡んでくるからです。
これらのトラブルを事前に把握し、適切な対処を行うことで、円滑な工事進行と住民間のトラブルの回避が可能となります。
修繕積立金の不足による問題
マンションの大規模修繕において、修繕積立金が不足すると工事を行うことが難しくなることがあります。
これは、一般的には住民が積み立てている修繕積立金が滞納されたり、計画された修繕費用の適正な計算が行われていなかったりすることが原因です。
修繕積立金が不足してしまった場合、以下のような方法で費用を補う必要があります。
1. 修繕積立金の追加徴収:新たに積立金を追加して、不足分を補う方法です。
2. 修繕積立金の値上げ:現在の修繕積立金の金額を引き上げて、不足分を補う方法です。
3. 金融会社からの借り入れ:金融機関から融資を受けて、不足している修繕費用を工面する方法です。
これらの方法のうち、適切なものを選択して対応することが重要です。
修繕積立金の管理や計画には慎重さが求められるため、適切な予算編成や適切な対策が必要です。
修繕積立金の追加徴収の問題
共有建物の大規模修繕工事において、発生した不足費用を各戸の居住者に対して均等に分担させ、一時金として追加で負担してもらう方法は、一般的に行われる手法です。
この際、一時金の徴収は利子がかからず、素早く必要な資金を調達できる利点があります。
ただし、実際には、これには家計への負担が大きいという課題が付きまといます。
多くの場合、工事の直前になっても、意図した金額が全額集まらないという状況が生じることがよくあります。
不足金がわずかであれば、理解を得ながら住民に追加徴収を行うことは可能でしょう。
しかし、金額が大きい場合、全住民から資金を徴収することは困難です。
もしも工事の直前までに必要な資金が調達できない状況に陥ると、工事内容の変更や施工会社への支払い遅延の原因となりかねないため、できる限りそのような状況は避けるべきでしょう。
修繕積立金の値上げの問題
修繕積立金の金額を増やす方法について詳しくお伝えしますね。
修繕積立金の金額を増やす利点は、住民が一括で支払う必要がない点です。
毎月の支払いが少額ずつ増えるため、住民にとって負担が軽減されます。
ただし、毎月の支払い額が増えるということで、住民からは反対の意見が出る可能性があります。
金額を増やす際には、工事に必要な費用のデータを準備し、住民にじっくりと説明することが重要です。
また、修繕費用の見通しが立っており、工事が始まるまでに余裕がある場合に検討すると良いでしょう。
金融機関からの借入の問題
金融機関から資金を借り入れて、不足分を補填する方法は、一つの手段です。
この方法を利用することで、工事の資金が不足してもリスクを軽減することができます。
ただし、毎月の返済額が修繕積立金に使用されるため、積立金を増やすことが難しくなる可能性があります。
さらに、利息も支払わなければならず、返済額が増加するというデメリットも考えられます。
しかし、この方法を使用することで、迅速に資金を調達し、住民からの苦情を防ぐことができるため、最も現実的な手段の一つと言えるでしょう。
修繕委員会での問題
修繕委員会とは、マンション住民が集まって大規模な修繕工事の計画や実施を行うために作られる団体です。
修繕委員会の主な役割は、建設会社の選定や契約内容の打ち合わせ、そしてマンション住民との円滑なコミュニケーションを取ることです。
修繕委員会で起こりがちなトラブルの一つには、委員の人数が少なかったり多かったりすることが挙げられます。
たとえば、2〜3人の少数で委員会が構成されると、個々の都合や忙しさで会合が開けず、業務が停滞してしまう可能性があります。
その結果、管理会社にすべてを委ねてしまい、コストが増大する可能性もあります。
一方、委員会のメンバーが多すぎると、意見の統一が困難になることがあります。
委員間での対立が生じた場合は、外部の専門家を第三者として巻き込むことも有効です。
修繕委員会を構成する際には、5人が理想的な人数とされており、年齢や性別など様々な要素を考慮して公平なメンバーを選出することが大切です。
マンション老朽化の要因の一つは「修繕費を払えない」
マンションの老朽化が進む要因の一つは、経年とともに発生する修繕費用の支払いが困難になることです。
建物が建築された当初から、適切な修繕積立金を徴収していなかったり、徴収していてもその金額が不十分だったりする場合、適切な修繕費用を用意することが難しくなり、必要な修繕工事が行われずに老朽化が進むことになります。
さらに、修繕積立金が不足しているにもかかわらず問題を見送ってしまうと、所有者が高齢化するとともに修繕積立金の増額や一時金の徴収がさらに困難になるでしょう。
適切なメンテナンスを計画的に行い、適切に費用をかけていれば、マンションは100年間持続することが可能と言われています。
定期的な修繕を行うことで、老朽化による問題を解決することができます。
マンションの寿命を延ばすことができれば、最終的な修繕や財政的な準備をする時間を確保することができ、突然の困難に直面することなく、マンションの終末を迎えることができるでしょう。
マンション老朽化により生じる問題
マンションが老朽化してしまうと、さまざまな深刻な問題が生じます。
例えば、住民のニーズに合った状態を維持できなくなり、生活環境の質が低下する可能性があります。
また、マンション内外の安全性が損なわれ、管理委託契約を継続することが難しくなることもあります。
さらに、売却を検討しても、買い手がつかない状況に陥るかもしれません。
結果として、マンションがスラム地域化してしまう恐れもあります。
老朽化したマンションは、様々な問題を引き起こす可能性があるため、定期的なメンテナンスや改修が重要です。
ニーズに合わなくなる
新築時には最新の設備が整っていても、古びた設備や居住者に適さない設備があるマンションは、経年とともに住んでいて不便さを感じることがあります。
例えば、ネット環境が整備されていなかったり、インターフォンにモニターがなかったり、宅配ボックスがなかったり、高齢者や障害者に配慮していなかったりすると、住むうちに不満が溜まりやすくなります。
そのため、マンションの価値も下がり、将来的に売却時に他の物件よりも選ばれにくくなるでしょう。
居住者・近隣住民の安全性を確保できない
建物が古くなると、住人や近隣住民の安全が危険にさらされる可能性があります。
例えば、外部階段の鉄製手すりが錆びて壊れたり、外壁のタイルがはがれたりする可能性があります。
1981年6月以前に建築確認申請を受けたマンションは、古い耐震基準に基づいて設計されているため、震度5強までの地震には耐えられるようになっています。
しかし、震度6弱以上の地震に対応するための十分な耐震性能は備わっていない可能性があります。
震度5強程度の地震でも、建物は倒壊しないかもしれませんが、一部が損傷する可能性があります。
一方、新しい耐震基準に準拠した建物は、震度5強程度の地震でも軽微な損傷で済み、震度6強から7に達する大きな地震でも倒壊や崩壊を免れる設計になっています。
そのため、地震が発生した際の安全性が比較的高いと言えます。
居住者の生活レベルが下がる
マンションが経年劣化すると、住民の生活環境に悪影響を及ぼす可能性があります。
何とか修理を行えればいいのですが、放置してしまうと、屋上の防水材の劣化による水漏れや、給排水管の腐食による水漏れや悪臭、排水の流れが悪化するなどの問題が起こります。
大規模な修繕工事や日常的な修理を適切に行わないと、生活に直結するトラブルが頻繁に発生する恐れがあります。
毎日水漏れの心配をしなければならないマンションでは、住民が心地よく過ごせる場所とは言えなくなってしまいます。
売却したくても買い手がつきにくい
古くなったマンションは、売却しようとしてもなかなか買い手が現れず、売れない状況に陥ることがあります。
通常、マンションは一戸建て住宅よりも売りやすいと言われていますが、老朽化したマンションは外観の劣化や設備の使いにくさ、安全性に対する不安から、そこで暮らすことも売却することも困難になってしまいます。
もしも亡くなった場合、そのマンションが相続財産となるのではなく、むしろ相続人である子供や孫たちに負担をかける負債として残ってしまう可能性があるのです。
管理委託契約を更新できないこともある
修繕費用が足りなくて修理ができない、高齢の建物で管理組合の機能が不十分なため、管理が重荷となる老朽化マンションは、管理会社も撤退してしまうことがあります。
管理会社は、マンションの運営に関する実務を担当し、管理組合を支援する責務があります。
管理会社はマンションの状態を把握しており、修理の提案や管理費の見直しを提案しても、受け入れられず、改善の意思さえ見られない場合、管理することが難しくなります。
管理状況が悪化して管理会社に見捨てられてしまうと、さらなる改善が難しくなります。
まとめ
マンションの大規模修繕工事において、施工前、施工中、施工後の各段階で起こりうるトラブルやその対応策を紹介してきました。
しかし、いくら準備を整えていても、工事が始まると予想外の問題が発生することがあります。
そのような場合には、まずは冷静になり、管理会社や施工会社、設計事務所など、工事に関わる担当者に相談しましょう。
工事の進行状況や内容の確認、住民の気付きや意見に対処するためにも、工事に関わる人と積極的にコミュニケーションを取ることが大切です。
全体の進行を円滑にするためには、関係者との良い協力関係を築き上げ、大規模修繕工事を成功に導いていきましょう。